腎機能検査値の正しい見方|クレアチニン・BUN・eGFR・シスタチンCの違いと注意点






腎機能検査値の正しい見方|クレアチニン・BUN・eGFR・シスタチンCの違いと注意点


腎機能検査値の正しい見方

クレアチニン・BUN・eGFR・シスタチンCの違いと注意点

臨床工学技士の専門知識で詳しく解説

こんにちは。臨床工学技士として透析医療に携わる中で、腎機能評価の重要性を日々実感しています。

血液検査で「クレアチニンが高い」「eGFRが低い」と言われても、それぞれの検査値が何を意味するのか、どのような要因で変動するのかを正しく理解することが大切です。

今回は、腎機能を評価する主要な指標について、それぞれの特徴と注意すべきポイントを詳しく解説します。

腎機能マーカー比較一覧

検査項目 信頼性 影響を受ける因子 特徴
クレアチニン ⭐⭐⭐ 筋肉量、運動、年齢、性別 最も一般的、簡便
eGFR ⭐⭐⭐⭐ 筋肉量(間接的) 年齢・性別補正済み
BUN ⭐⭐ 食事、脱水、肝機能 腎機能以外の影響大
シスタチンC ⭐⭐⭐⭐⭐ 甲状腺機能、ステロイド 最も正確、高価

クレアチニン(Creatinine)

基本的な特徴

正常値: 男性 0.65-1.07 mg/dL、女性 0.46-0.79 mg/dL

産生場所: 筋肉(クレアチンリン酸の分解産物)

排泄経路: 主に腎臓の糸球体濾過

メリット: 簡便、安価、広く普及

影響する因子

筋肉量の影響

筋肉量が多い人ほど高値になる

運動の影響

激しい運動後は一時的に上昇

年齢・性別

男性、若年者で高い傾向

運動とクレアチニンの関係

激しい運動によって筋肉が分解されると、クレアチニンが血液中に放出されます。これは一時的な現象で、通常24-48時間で正常化します。

注意点: 検査前日の激しい運動は避け、安静時の値で評価することが重要です。

eGFR(推算糸球体濾過量)

eGFRとは

eGFRは、クレアチニン値に年齢・性別・体表面積を加味して計算される、より正確な腎機能指標です。

日本人向け計算式

男性: eGFR = 194 × Cr^(-1.094) × 年齢^(-0.287)

女性: eGFR = 194 × Cr^(-1.094) × 年齢^(-0.287) × 0.739

なぜ同じクレアチニンでもeGFRが違うのか?

具体例で理解しよう

20歳男性

クレアチニン: 1.0 mg/dL

eGFR: 82 mL/min/1.73m²

80歳女性

クレアチニン: 1.0 mg/dL

eGFR: 41 mL/min/1.73m²

理由: 高齢者は筋肉量が少ないため、同じクレアチニン値でも実際の腎機能は低い状態を反映しています。

eGFRによる腎機能分類

正常~軽度低下

≥60

mL/min/1.73m²

中等度~高度低下

15-59

mL/min/1.73m²

末期腎不全

<15

mL/min/1.73m²

BUN(血中尿素窒素)

基本情報

正常値: 8-20 mg/dL

産生場所: 肝臓(蛋白質代謝産物)

排泄: 主に腎臓

BUNの問題点

食事の影響

高蛋白食摂取で上昇

脱水の影響

脱水状態で著明に上昇

肝機能の影響

肝機能低下で低値

なぜBUNは腎機能評価に適さないのか?

1. 腎外因子の影響が大きい
蛋白質摂取量、肝機能、消化管出血、発熱などで大きく変動します。

2. 尿細管での再吸収
BUNは糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収されるため、腎機能を直接反映しません。

3. 脱水の影響
軽度の脱水でも著明に上昇するため、水分摂取状況に左右されます。

結論: BUNは補助的な指標として使用し、腎機能の主要評価にはクレアチニンやeGFRを用いるべきです。

シスタチンC(Cystatin C)

シスタチンCの優位性

メリット


  • 筋肉量に影響されない

  • 食事の影響を受けない

  • 運動の影響が少ない

  • 軽度腎機能低下を早期発見

  • 年齢・性別の影響が少ない

制限事項


  • 検査費用が高い

  • 保険適用に制限あり(3ヶ月に1回)

  • 甲状腺機能の影響

  • ステロイド使用時の影響

シスタチンCが特に有用な患者

• 高齢者
筋肉量減少でクレアチニンが不正確

• 筋疾患患者
筋肉量が著明に少ない

• 小柄な患者
筋肉量が少ない

• アスリート
筋肉量が多くクレアチニン高値

• 長期臥床患者
筋肉量減少

• 軽度腎機能低下
早期発見に有用

臨床工学技士からのアドバイス

検査前の注意事項


  • 激しい運動は検査前日から控える

  • 十分な水分摂取を心がける

  • 服用薬は医師に相談

  • 体調不良時は検査延期を検討

結果の読み方


  • 単一の検査値だけで判断しない

  • 経時的な変化を重視する

  • 症状と合わせて総合評価

  • 必要に応じてシスタチンCも測定

まとめ

腎機能評価には複数の指標があり、それぞれに特徴と制限があります。

検査値選択の指針

• 日常的なスクリーニング: eGFR(クレアチニンベース)

• より正確な評価が必要: シスタチンC-eGFR

• 補助的な情報: BUN(腎機能以外の要因も考慮)

• 継続的なモニタリング: 複数指標の経時的変化

適切な検査値の理解により、腎機能の正確な評価と早期発見・治療介入が可能になります。

検査結果について疑問がある場合は、遠慮なく医療スタッフにご相談ください。

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