「血液透析と腹膜透析のSDM選択促進ガイド」






血液透析と腹膜透析のSDM選択促進ガイド | PKD三重奏ブログ



血液透析と腹膜透析のSDM選択促進ガイド

共同意思決定による最適な透析方法の選択

共同意思決定

患者と医療チームの協働

適切な選択

個々の状況に最適化

QOL向上

生活の質の改善


SDM(共同意思決定)とは

SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)とは、患者と医療従事者が医学的根拠と患者の価値観や好みを統合し、共同で治療方針を決定するプロセスです。

科学的根拠

医学的エビデンスと臨床データに基づく情報提供

患者の価値観

個人の生活スタイルや優先事項を重視

協働決定

医療チームと患者の対等なパートナーシップ

透析選択におけるSDMの重要性


  • 個別化された治療: 患者一人ひとりの生活状況や価値観に適した透析方法を選択

  • 治療満足度の向上: 自らが参加した決定により、治療への積極的な取り組みが促進

  • 長期的な成功: 持続可能で現実的な治療計画の実現

透析方法の総合比較

比較項目 血液透析(HD) 腹膜透析(PD)
実施場所 透析施設(病院・クリニック) 自宅・職場・旅行先
時間・頻度 週3回、1回4-5時間 毎日4回または夜間連続
生活の自由度 決まった時間の通院が必要 時間・場所の制約が少ない
医療スタッフ関与 常時専門スタッフが管理 自己管理(定期受診あり)
食事制限 リン・カリウム制限が厳格 比較的制限が緩やか
残腎機能保護 急激な変化 緩やかで残腎機能を保護
感染リスク 穿刺部感染 出口部・腹膜炎
社会復帰 フルタイム就労が困難 就労継続しやすい

血液透析の特徴

メリット:

  • 専門スタッフによる安全管理
  • 効率的な毒素除去
  • 緊急時の迅速対応
  • 患者同士の交流機会

デメリット:

  • 通院による時間的制約
  • 血管アクセストラブル
  • 透析間の体調変動

腹膜透析の特徴

メリット:

  • 生活スタイルの維持
  • 残腎機能の保護
  • 食事制限の緩和
  • 旅行・出張への対応

デメリット:

  • 自己管理の責任
  • 腹膜炎のリスク
  • 長期継続の限界

透析方法適合度スコア


使用方法: 各項目について該当する場合にチェックを入れ、最終的にどちらの透析方法により多くチェックが入るかを確認してください。ただし、これは参考指標であり、最終決定は必ず医療チームと相談して行ってください。

血液透析適合度チェック








血液透析スコア: 0/8

腹膜透析適合度チェック








腹膜透析スコア: 0/8

スコア解釈の目安

  • 6-8点: その透析方法に高い適合性
  • 4-5点: 中程度の適合性(要検討)
  • 3点以下: 適合性が低い可能性


注意:このスコアは参考であり、医学的状態や個人の状況により最適な選択は変わります。

ADPKD患者特有の考慮事項

多発性嚢胞腎(ADPKD)患者では、腎臓の巨大化や合併症により、透析方法の選択に特別な配慮が必要です。

腎臓サイズの影響

腹腔スペースの制約

巨大な嚢胞腎により腹腔内スペースが制限され、腹膜透析液の貯留が困難な場合があります。

呼吸機能への影響

腹膜透析液により横隔膜が圧迫され、呼吸困難を生じる可能性があります。

合併症の考慮

心血管合併症

高血圧や心疾患の管理において、透析方法による体液管理の違いを考慮。

脳血管合併症

脳動脈瘤のリスクがある場合、急激な体液・血圧変動を避ける必要性。

ADPKD患者の透析選択指針

血液透析を検討すべき場合


  • 腎臓が著しく巨大化(TKV 3000ml以上)

  • 呼吸機能に制限がある

  • 腹部手術の既往がある

腹膜透析を検討すべき場合


  • 腎臓サイズが比較的小さい

  • 残腎機能が良好

  • 就労継続を強く希望

SDM実践プロセス

1

情報収集・準備段階


  • 現在の腎機能(eGFR、クレアチニン)の把握

  • 腎臓サイズ(TKV)の測定結果確認

  • 透析導入時期の予測

  • 生活状況・価値観の整理

2

医療チームとの相談


  • 腎臓内科医: 医学的適応と禁忌の説明

  • 透析看護師: 日常管理と合併症対策

  • 臨床工学技士: 技術的側面と装置管理

  • 管理栄養士: 食事療法の違い

3

体験・見学機会の活用


  • 透析室見学と実際の治療風景の確認

  • 先輩患者との面談・体験談聴取

  • 腹膜透析の手技体験(シミュレーション)

4

家族・サポート体制の検討


  • 家族会議での情報共有と合意形成

  • 住環境の整備可能性の確認

  • 職場との相談・調整

5

最終決定と準備開始


  • 医療チームとの最終確認

  • 導入スケジュールの決定

  • 患者教育・家族指導の開始

臨床工学技士からのアドバイス

28年の透析業務経験から、透析方法選択で重要だと感じるポイントをお伝えします。

技術的観点から


  • 血管アクセスの状態は個人差が大きく、長期管理が重要

  • 腹膜透析は初期の手技習得が成功の鍵

  • 装置の進歩により両方法とも安全性が向上

患者さんとの接し方


  • 不安や疑問を遠慮なく相談してください

  • 現在の生活で最も大切にしたいことを教えてください

  • 選択後も変更は可能です。柔軟に考えましょう

長期的な視点


  • 10年、20年先の生活を想像してみてください

  • 移植を目指す場合の戦略も考慮

  • 透析方法の変更も選択肢の一つ

ADPKD患者として

同じADPKD患者として、透析選択の悩みは深く理解できます。医学的な側面だけでなく、
患者としての実体験も踏まえ、一人ひとりに最適な選択をサポートします。
遠慮なく相談してください。

実際の選択事例

血液透析を選択したAさん(45歳、会社員)

選択理由

  • • 腎臓が著しく巨大化(TKV 4500ml)
  • • 自己管理に不安
  • • 早期退職を決断

現在の状況(導入2年後)

「透析仲間との交流が心の支えになっています。規則正しい生活リズムで体調も安定しています。」

腹膜透析を選択したBさん(38歳、教員)

選択理由

  • • 教員という職業を続けたい
  • • 残腎機能が良好
  • • 家族のサポートあり

現在の状況(導入3年後)

「仕事を続けながら治療できています。旅行も楽しめ、QOLが保たれています。」

事例から学ぶポイント


  • 医学的条件だけでなく、生活スタイルや価値観が重要

  • 家族や職場のサポート体制の有無が選択に大きく影響

  • どちらを選んでも適切な管理により良好な経過が期待できる

よくある質問

Q1. 透析方法を決めた後、変更することはできますか?

はい、可能です。医学的な条件や生活状況の変化により、透析方法の変更は珍しいことではありません。
血液透析から腹膜透析へ、またはその逆も可能です。ただし、変更には準備期間が必要な場合があります。

Q2. ADPKD患者では、どちらの透析方法が良いのでしょうか?

ADPKD患者に特有の「最適な」透析方法はありません。腎臓のサイズ、合併症の有無、
生活スタイル、患者さんの価値観により個別に決定します。重要なのは十分な情報収集と医療チームとの相談です。

Q3. 透析導入のタイミングはどのように決まりますか?

主にeGFR(推定糸球体濾過率)が6-8 ml/分/1.73m²程度まで低下した時が目安ですが、
症状の出現、栄養状態、心機能なども考慮して総合的に判断します。早めの準備開始が重要です。

Q4. 腹膜透析の場合、感染のリスクはどの程度ですか?

適切な手技により感染リスクは大幅に軽減できます。腹膜炎の発生率は施設により異なりますが、
年間0.2-0.5回程度が目標とされています。十分な教育と継続的な指導により予防可能です。

Q5. 血液透析の場合、血管アクセスの管理はどのようにしますか?

血管アクセス(シャント)は「透析患者の生命線」です。日常的な観察、
適切な清潔管理、定期的な検査が重要です。問題が生じた場合は早期の対処により長期間使用可能です。

まとめ

SDMの重要ポイント


  • 医学的根拠と個人の価値観の両方を重視

  • 医療チーム全体との十分な相談

  • 家族やサポート体制の確認

  • 長期的な視点での検討

  • 変更可能性を考慮した柔軟な姿勢

  • 継続的な評価と調整

最後に

透析方法の選択は、単なる医学的な判断ではありく、あなたの人生設計の重要な一部です。
どちらの方法も現在は高い安全性と有効性が確立されており、適切な選択と管理により
良好な生活の質を維持することができます。

PKD三重奏ブログでは、ADPKD患者として、そして臨床工学技士として、
皆さんの透析選択と日常生活をサポートする情報を継続的に発信していきます。
ご質問や体験談があれば、ぜひお聞かせください。

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※本記事の内容は参考情報であり、個別の医療相談は必ず医療機関で行ってください。



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