「透析選択で大切にしたいこと〜臨床工学技士の想い〜」






透析方法の選び方|血液透析vs腹膜透析を患者さんと一緒に考える【臨床工学技士の想い】


透析方法の選び方

血液透析vs腹膜透析を患者さんと一緒に考える

【臨床工学技士の想い】


臨床工学技士 | 腎代替療法士を目指して


こんにちは。透析室で働く臨床工学技士です。毎日多くの患者さんと接する中で、いつも心に残る想いがあります。それは「この患者さんにとって、本当に最適な透析方法を選択できているだろうか」ということです。

現在私は、腎代替療法士の資格取得に向けて勉強を続けています。この学びを通じて改めて感じるのは、透析方法の選択がいかに患者さんの人生に大きな影響を与えるかということです。

今日は、血液透析と腹膜透析の選択について、SDM(共同意思決定)の重要性とともに、現場で感じていることをお話しさせていただきたいと思います。

SDM(共同意思決定)って何だろう?

SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)とは、医療者が一方的に治療法を決めるのではなく、患者さんとご家族、そして医療チームが一緒になって最適な治療法を考えていくアプローチです。

SDMの3つのポイント


  • 十分な情報提供:各治療法のメリット・デメリットを分かりやすく説明

  • 患者さんの価値観の尊重:生活スタイルや希望を大切にする

  • チーム一丸となったサポート:医師、看護師、臨床工学技士が連携

残念ながら、現在でも多くの医療機関では血液透析が「標準的な選択肢」として提示され、腹膜透析について十分な説明がなされていないケースが少なくありません。患者さんには選択する権利があり、その選択を支援するのが私たち医療者の役割だと思っています。

血液透析と腹膜透析を比べてみると

血液透析(HD)

メリット

  • • 週3回の通院で治療完結
  • • 医療者による管理が行き届く
  • • 急変時の対応が迅速
  • • 同じ患者さん同士の交流

デメリット

  • • 週3回の通院が必要
  • • 1回4時間程度の拘束時間
  • • 旅行時の透析施設確保
  • • 体重制限が厳しい

腹膜透析(PD)

メリット

  • • 自宅で治療可能
  • • 通院は月1-2回程度
  • • 旅行先でも治療継続
  • • 比較的自由な生活リズム

デメリット

  • • 毎日の自己管理が必要
  • • 感染リスクへの注意
  • • カテーテル管理
  • • 家族のサポートが重要

腹膜透析が向いている方って?

私が現場で感じる、腹膜透析が適している患者さんの特徴をご紹介します:

ライフスタイル面

  • • 仕事を続けたい方
  • • 旅行や外出を楽しみたい方
  • • 自分のペースで治療したい方
  • • 家族との時間を大切にしたい方

医学的な面

  • • 心臓に負担をかけたくない方
  • • 血管アクセスの確保が困難な方
  • • 残腎機能を長く保ちたい方
  • • 導入初期の方


先日、腹膜透析を選択された患者さんから「旅行先でも透析ができて、人生が変わりました」という言葉をいただきました。選択肢を提供することの大切さを改めて実感した瞬間でした。

私たちの小さな取り組み

腎代替療法士の勉強をきっかけに、私たちの病院でも少しずつ変化が起きています。まだまだ小さな一歩ですが:


透析導入前の患者さん向け勉強会を月1回開催

腹膜透析を実際に行っている患者さんの体験談を聞く機会を設置

医療スタッフの腹膜透析に関する知識向上研修

患者さん用の分かりやすいパンフレット作成

まだまだ十分とは言えませんが、患者さんに選択肢を提供するという意識が少しずつ根付いてきていることを嬉しく思っています。これからもっと充実させていきたいと考えています。

理想的な透析選択のプロセス

腎代替療法士として目指したい、理想的な意思決定プロセスをご紹介します:

1

早期からの情報提供

腎不全の進行とともに、透析に関する情報を段階的に提供し、患者さんが心の準備をできるようサポートします。

2

選択肢の平等な説明

血液透析、腹膜透析、それぞれのメリット・デメリットを公平に説明し、どちらか一方に偏らない情報提供を行います。

3

生活スタイルの聞き取り

患者さんの価値観、生活リズム、家族構成、仕事の状況などを詳しく伺い、最適な選択をサポートします。

4

十分な検討時間の確保

急かすことなく、患者さんとご家族が納得できるまで相談を重ね、最終的な決定をサポートします。

これからの透析医療への想い

臨床工学技士として、そして腎代替療法士を目指す者として、これからの透析医療に対する想いをお話しさせていただきます。

現在の課題

  • • 腹膜透析の選択肢を提示しない医療機関がまだ多い
  • • 医療者側の腹膜透析に関する知識不足
  • • 患者教育の時間と人手の不足
  • • 施設の収益性を重視した選択誘導

目指したい未来

  • • すべての患者さんが選択肢を知った上で治療法を決められる
  • • 医療者全体の腎代替療法に関する知識向上
  • • 患者さん一人ひとりに寄り添った医療の実現
  • • 生活の質を重視した治療選択の文化定着

私自身、腎代替療法士の資格取得を通じて、より深い知識と技術を身につけ、患者さんの最適な治療選択をサポートできるよう努力を続けています。一人の医療者として、そして一人の人間として、患者さんとご家族の想いに寄り添える存在でありたいと思っています。

最後に

透析方法の選択は、患者さんの人生に大きな影響を与える重要な決断です。血液透析、腹膜透析、それぞれに特徴があり、患者さんの生活スタイルや価値観によって最適な選択は変わります。

大切なのは、十分な情報を得た上で、患者さん自身が納得できる選択をすることです。医療者は、その選択を支援する役割を担っています。

患者さんとご家族へのメッセージ

• 透析方法について、遠慮なく質問してください

• セカンドオピニオンを求めることも大切です

• あなたらしい生活を送れる治療法を一緒に見つけましょう

• 選択した後も、いつでも相談できる関係を築いていきましょう

透析医療の発展とともに、SDMの考え方がより多くの医療機関に広がることを願っています。患者さん一人ひとりが、自分らしい人生を送れるような医療を、これからも提供していきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
– 臨床工学技士より –

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