血液透析(HD)と血液ろ過透析(HDF)の違い
多発性のう胞腎患者さんが知っておきたいポイント
臨床工学技士が解説
はじめに
多発性のう胞腎の患者さんから「血液透析にも種類があるって聞いたんですが、どう違うんですか?」というご質問をよくいただきます。確かに、透析と一言で言っても、実はいくつかの方法があるんです。
今日は、臨床工学技士として日々透析に携わっている私が、血液透析(HD)と血液ろ過透析(HDF)の違いについて、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
特に多発性のう胞腎の患者さんにとって、どちらの方法がより適しているかも含めてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
HD と HDF の基本的な違い
項目 | 血液透析(HD) | 血液ろ過透析(HDF) |
---|---|---|
主な除去方法 | 拡散(濃度差による移動) | 拡散 + 対流(水の流れで運ぶ) |
除去対象 | 小分子〜中分子が主体 | 小分子〜大分子まで幅広く |
かゆみ改善効果 | 基本的な効果 | より高い効果が期待 |
血圧への影響 | 血圧低下が起こりやすい | 血圧が安定しやすい |
治療時間 | 通常4時間程度 | 通常4時間程度 |
血液透析(HD)について
仕組み
血液透析は「拡散」という原理を主に使って、血液中の老廃物を取り除きます。これは、濃度の高いところから低いところへ物質が移動する自然な現象を利用しています。
お茶を入れたときに、茶葉の成分が水に広がっていくのと同じような仕組みですね。
得意な除去物質
-
小分子物質(尿素、クレアチニンなど) -
一部の中分子物質 -
大分子物質は除去しにくい
HDは長年使われてきた確立された方法で、多くの患者さんに安全に行われています。
血液ろ過透析(HDF)について
仕組み
HDFは拡散に加えて「対流」という仕組みも使います。これは、水の流れに乗って老廃物を運び出す方法です。
川の流れに木の葉が流されるように、水と一緒に様々な大きさの物質を効率よく除去できます。
得意な除去物質
-
小分子物質 -
中分子物質 -
大分子物質も効率よく除去
HDFの特別な効果
かゆみの改善
HDFは中分子〜大分子の除去が得意なため、透析患者さんを悩ませる「かゆみ」の原因物質をより効果的に取り除くことができます。
血圧の安定
HDFでは水分除去がより緩やかに行われるため、透析中の急激な血圧低下を防ぎ、より安定した治療が可能です。
多発性のう胞腎の患者さんにとって
なぜHDFが注目されているのか
多発性のう胞腎の患者さんは、腎機能の低下とともに様々な症状に悩まされることがあります。特に:
-
透析後の疲労感が強い -
かゆみが気になる -
透析中の血圧変動が心配
このような症状でお困りの場合、HDFがより良い選択肢になる可能性があります。
医療チームとの相談が大切
ただし、どちらの方法が最適かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なります。血液検査の結果、血管の状態、全身状態などを総合的に判断する必要があります。気になることがあれば、ぜひ担当の医師や看護師、臨床工学技士にご相談ください。
どちらを選ぶかの判断基準
HDが向いている場合
透析歴が短く、まずは標準的な方法から始めたい
血圧や循環動態が安定している
特に困っている症状がない
HDFが向いている場合
かゆみに悩まされている
透析中の血圧低下が起こりやすい
透析後の疲労感が強い
より積極的な治療を希望している
まとめ
血液透析(HD)と血液ろ過透析(HDF)、どちらにもそれぞれの特徴があります。HDは確立された安全な方法で、HDFはより幅広い物質除去と症状改善が期待できる方法です。
多発性のう胞腎の患者さんにとって、透析は長く付き合っていく治療です。だからこそ、ご自身の症状や生活スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
迷ったときは、遠慮なく医療チームに相談してください。私たち臨床工学技士も、患者さんにとって最適な透析を一緒に考えていきます。
よくある質問
Q: HDFは費用が高くなりますか?
A: HDFも保険適用の治療です。患者さんの自己負担額は基本的にHDと変わりません。
Q: 途中でHDからHDFに変更できますか?
A: はい、医師の判断により変更可能です。症状や検査結果に応じて最適な方法を選択します。
Q: HDFにリスクはありますか?
A: HDFも安全な治療法ですが、すべての患者さんに適しているとは限りません。血管状態や全身状態を総合的に判断して決定します。
ご相談はお気軽に
透析方法について気になることがございましたら、
いつでも医療スタッフにお声がけください。
臨床工学技士一同